台湾の大手書店チェーン、金石堂書店株式会社(Kingstone Book Co., Ltd.)が18日午後、2018年「金石堂年度風雲人物及十大影響力好書(金石堂が選ぶ今年の話題の人物と影響力を発揮した優良図書十冊)」の授賞式典を行った。「出版界における話題の人物」には何琦瑜さん、「最も話題の作家」には駱以軍さんが選ばれた。
「影響力を発揮した優良図書十冊」には、呉暁楽さんの『你的孩子不是你的孩子』、恩田陸さんの『蜜蜂與遠雷(蜜蜂と遠雷)』、張曼娟さんの『我輩中人』、Susan Kuangさんの『斜槓青年』、許皓宜さんの『情緒寄生』、ダン・ブラウンさんの『起源(オリジン)』、李崇建さんの『薩提爾的対話練習』、ユヴァル・ノア・ハラリさんの『21 Lessons for the 21st Century』、頼馬さん・頼暁妍さん共著の『朱瑞福的游泳課』、顔擇雅さんの『最低的水果摘完之後』。10作品のうち6作品は台湾の作家によるものだった。
『最低的水果摘完之後』の著者、顔擇雅さんは受賞のスピーチの中で台湾における出版市場の現況を分析した。顔さんによれば、台湾は2000年以降労働力人口が中国大陸へと移動し始め、その人数は100万人を突破した今も増え続けている。顔さんは、「これらの人たちは実は台湾で主に図書を買うであろうグループだ」と述べ、台湾の出版市場が徐々に縮小していることを指摘した。
人々が中国大陸に移り住むことで市場が冷え込む現象について顔さんは、最初は楽観的だったという。顔さんは、「台湾では図書を購入するためのテクノロジーが発達していたし、2000年以降は教育面でも読書が推進されていた。このため中国大陸への労働力人口流出が出版市場にもたらすマイナスの影響を感じることは無かった」と話した。最近になってその影響が感じられるようになった原因は、中国大陸に向かう人々が引き続き増えていることと、ネットショッピングの技術がピークに達したこと。顔さんは、「出版業界にとって最も低いところにある果実は全て収穫されてしまったことを意味する」と話す。
顔さんはさらに最も重要な原因として、「経済的機会の減少が読書意欲の低下につながっている」と説明し、出版業界が今後努力する方向は国民の読書に対する意欲を刺激することだと主張した。出版事業とは本来、人々の思想を変化させることだとする顔さんは、「世界の変化に向き合い、我々の世界に対する見方も変わっていかねばならない。国民の読書の志向に変化を与える。これこそ自分がこの本を書いた理由だ」と述べた。
また、『我輩中人』の著者、張曼娟さんは受賞のスピーチで、昨年、中年が暮らしていく上での「悟り」を描こうとこの作品に着手した時、「自分から年齢を明かす女性などいるものか」とあきれられたが、出版後は予想以上に大きな反響を呼ぶことになったと喜んだ。
金石堂による今年のヒット作上位十位は以下の通り。
1、斜槓青年/Susan Kuang
2、你的善良必須有点鋒芒/慕顔歌
3、起源(オリジン)/ダン・ブラウン
4、情緒勒索/周慕姿
5、刻意練習(超一流になるのは才能か努力か?)/アンダース・エリクソン
6、解憂雑貨店(ナミヤ雑貨店の奇蹟)/東野圭吾
7、不要在該奮闘時選擇安逸/老洋的猫頭鷹
8、天長地久/龍応台
9、有銭人想的和你不一様(Secrets of the Millionaire Mind)/T.Harv Eker
10、被討厭的勇気(嫌われる勇気)/岸見一郎